「長く歩くと股関節が痛む」「階段で足が上がらない」「立ち上がりに股関節が伸びない」「あぐらがかけない」「車の乗り降りがつらい」「寝返りが痛くて眠れない」など、股関節の痛みによって起こる悩みは様々なものがあります。そんな股関節の痛みの原因になる疾患を3つご紹介します。
① 変形性股関節症
変形性股関節症とは、股関節を構成する骨盤の寛骨臼(股関節の受け皿の部分)と大腿骨の骨頭(先端のボール状の部分)が変形し、痛みや可動域制限がおきてしまう病気です。多くは女性に発症し、先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全といった問題から進行することが多い病気です。初期症状は股関節の違和感や歩きづらさ程度ですが、徐々にお尻や太もも、膝にかけて痛みが広がっていきます。変形が進行してしまうと安静にしていても痛い、寝返りができないなど日常生活にも支障を及ぼします。股関節周辺の筋力強化や体重の管理などを行っても改善が難しい場合は、一般的には人工関節置換術や骨切り術といった手術が勧めわれるようになります。
② 関節リウマチ
関節リウマチとは、免疫機能の異常によって股関節のみならず全身のあらゆる関節で炎症が起き、腫れやこわばりが生じる病気です。関節の中にある滑膜の炎症により軟骨や靭帯が破壊され、進行すると骨まで破壊されて関節の変形につながります。関節リウマチが発症する原因は明確にはわかっていませんが、30〜50代の女性に起こりやすく、病院で血液検査や画像検査によって診断されます。関節リウマチの治療は、消炎鎮痛剤やステロイド剤などの薬物療法が主流です。手術には、変形を予防するための「滑膜切除術」と、すでに変形してしまった関節に行う「人工関節置換術」があります。
③ 股関節インピンジメント症候群(FAI)
股関節インピンジメント症候群は、股関節の病態に対する比較的新しい考え方です。「インピンジメント」とは“衝突する”という意味で、股関節の臼蓋と大腿骨が衝突することで痛みや運動制限が発生するとういう考え方になります。普段の歩行では痛みを感じることは少なく、車の乗り降りやしゃがむ動作など股関節を深く曲げたときに股関節の前方に鋭い痛みが出ることが特徴です。FAIは比較的若くスポーツを行っている人に発症しやすく、股関節の骨に何かしらの形態異常があることがほとんどです。病院では股関節周辺の筋力強化やストレッチなどのリハビリに加え、痛み止めの服用などが行われますが、症状が改善できずに関節唇や関節軟骨の損傷が進行している場合は手術の適応になります。